"Female Health"を正しく理解してもらい、多くの女性に身体の中から美しくなってほしいと考える当サイトでは、(社)日本産婦人科医会・坂元正一会長をお迎えし、女性の健康管理について、産婦人科医とのつきあい方について、お話をうかがいました。



はじめに、(社)日本産婦人科医会について、坂元会長よりその目的、活動内容についてお聞かせください。
   
 私たち日本産婦人科医会は、女性の日常的な健康管理から妊娠、出産まで、女性保健医療全般をサポートすることによって「より良い母子保健の推進」をめざしています。具体的には、学術研修会の開催や発刊物によって情報交換を活発に行い、医療のレベルアップを常に心がけていますし、日本だけでなく世界の国々との交流も行っています。ほかには、「おぎゃー献金」も運営しています。全国の産婦人科医の窓口や廊下などに献金箱を設置して献金を募り、重症心身障害児の施設へ寄付したり、心身障害児出生予防のための研究費などに充てています。
   
今お話があった「おぎゃー献金」について、詳しくお聞かせください。
   
 「おぎゃー献金」という名前、どこかで耳にされた方も多いと思います。「おぎゃー献金」は、お産をされたお母さんを中心に、多くの方々の暖かい善意をハンディキャップを持った子供の保護、育成、またその研究に関わる機関に献金をする運動です。
 きっかけは、昭和37年にまでさかのぼります。 鹿児島県で産婦人科を開業していた遠矢善栄博士が、近くに住む重症心身障害の三姉妹を知り、救済する方法を八方手をつくして調査されました。しかし当時は収容施設すらなく、救いの道が固く閉ざされていました。そこで、この子どもたちに少しでも幸福を分け与えたいと、健康な赤ちゃんを産んだお母さん方、立ち合った医師、助産婦、看護婦さんに声をかけ、愛の献金をしたのが発端です。そして遠矢博士の提案を受けて、私たち日本産婦人科医会が昭和39年からこの運動を全国的に展開、今年で発足36年目をむかえます。平成10年12月までの献金総累計額は39億6000万円余に達し、全国延796の施設へ配分し、さらに心身障害児のため511の研究機関に研究費を贈呈しています。
 また、この運動は国内ばかりではなく、世界からも注目されています。昭和56年にはインドネシア、昭和62年にはイタリアで開催された"ユニセフ国際会議"の招きを受けて講演もしています。また、インドネシアや韓国では、すでにこの運動がスタートしています。 これからもハンディキャップを持つ人たちのために、献金してくださる方々と私たち日母の会員とでより強い連帯ができてくれればと願っています。 そして、やさしさと思いやりを次の世代へ伝えていきたいと考えています。
   
女性、そして未来を担う子どもたちにとって、本当に心強い味方ですね。では、今回のメインテーマ、女性の「セルフコントロール」に話を進めてまいりたいと思います。まず初めに、このホームページのコンセプト「Female Health」にも通じることですが、「セルフコントロール」の基本的な考え方についてお聞かせください。
   
 「セルフコントロール」とは、自分で自分の身体をコントロールする、つまり守ることです。病気になった時、病院で治療を受けることは大切ですが、もっと大切なことは、まず病気を予防すること、健康を常に維持することです。どんな病気にも原因があるわけですから、まず、普段の体調管理に気を使って、できるかぎり病気を予防していただきたいですね。普段の生活を、もう一度見つめ直してみてください。仕事や食事、スポーツなど、ライフスタイル、つまり生活習慣が身体に与える影響はたくさんあります。そのひとつひとつを見つめ直すことで、体調もずいぶん変わってくると思います。
   
女性たちの健康管理意識の現状については、どのような印象をお持ちですか。
   
 個人差はあると思いますが、さまざまな情報が手に入りやすい今、皆さんの意識はかなり高いと思います。特にインターネットの利用が目立ちます。パソコンを持つ女性の数も年々増えていくでしょうし、すでに女性向けの健康に関するホームページもたくさんあります。このホームページもそうですが、そういう情報をうまく取り入れながら、健康についての意識をさらに高めてもらいたいと思います。私たち日本産婦人科医会でも、ホームページを開設しています。少し専門的な話もありますが、より開かれた産婦人科医療をめざして、一般の女性の皆さんにも病気や薬について分かりやすく説明しています。
   
確かに今は、いろんな情報をさまざまな媒体から得ることができます。しかし一方で、一般女性の場合、自分のやり方が本当に正しいのかどうか不安になることも多いかと思います。もっと効果的に、確実に「セルフコントロール」を行うために、何か良い方法はあるのでしょうか。
   
 もちろん、あります。それは、産婦人科医をかしこく利用することです。私たちが定期健診の大切さを訴え続けている理由も、より正しい「セルフコントロール」を行ってもらいたいからです。定期健診を受けることは、つまり相談相手をつくること。普段は見て見ぬふりをしがちな身体のちょっとした変化でも、定期健診を受けることでなじみの先生ができれば相談しやすいですね。また、相談することで的確な答えを得られますから、気分的にも安心できます。医師のアドバイスで安心されるケースは、かなり多いと思います。一人で悩むより、まず相談する。それが正しい「セルフコントロール」の第一歩だと思います。
   
定期健診を受ける場合も、女性は産婦人科医に行った方がいいのでしょうか ?
   
 そうですね。女性の身体は、女性ホルモンによって一生のライフサイクルが営まれています。思春期、初経、妊娠、出産、更年期というように、年齢とともに身体が変化しますし、女性特有のいろいろな病気も出てきます。ですから、やはり女性の方は、産婦人科を一度は受診されるのがいいと思います。いろいろデリケートな問題もあるので、産婦人科のかかりつけ医をお決めになることをおすすめしたいですね。実際、産婦人科や婦人科があるのに対して、「男性科」という医院はありません。それだけ女性の身体の方が複雑・デリケートで、産婦人科はまさに、その専門医ということです。また、自治体の婦人科検診なども大いに利用されるといいと思いますよ。子宮がん検診や乳がん検診が無料で受けられる場合もありますし、受診場所も近くの医院を選べます。
   
今、会長がおっしゃった女性のライフサイクルについて、女性が健康な身体を維持していく上で、具体的にどのような点に気をつければいいのでしょうか。
   
 これは定期健診とも大いに関係があることなんですが、まず10代の方は、月経のちょっとした変化にも気を配ることが大切です。セックスの経験がある場合は、心配なら性感染症の検査を受けることもおすすめします。20代の方は、子宮内膜症にもご注意ください。結婚されている方で、避妊せずに2年以上たっても妊娠しない場合は、不妊症の検査もあります。30歳を過ぎれば子宮筋腫、子宮頚がん、乳がんなどに要注意です。そして40歳を過ぎれば子宮体がんも加わりますし、50歳を過ぎれば更年期症状や骨密度検査も必要になることがあります。
   
年齢によって、本当にさまざまなチェックポイントがありますね。
   
 ええ。健康な時は、誰しも定期健診をめんどうに思いがちですが、これだけたくさんのことをチェックしなければならないことを考えると、いかに定期健診が大切か、お分かりいただけると思います。定期健診を受けることは、今言った病気をチェックするだけでなく、ほかの病気の早期発見にも役立ちます。できれば半年に1回、少なくとも年に1回は定期健診を受けることをおすすめします。
   
坂元会長から女性の皆さんへ、定期健診がいかに大切かをお聞きしたわけですが、では逆に女性から産婦人科へ期待することとして、ご意見箱に寄せられた女性の意見をご紹介いたします。

『私は今、24歳です。今まで産婦人科医にかかったことはないのですが、少し気になる体調の変化があり、一度受診してみようと思っています。でも初めてなので不安もあり、ご意見箱に投稿しました。前に通っていた近くの内科医、私がいろいろ質問しても、少しめんどくさそうに対応されることがあるんです。病院にとっては何人もの患者の中のひとりでも、患者にとってはそれがすべてです。病院の先生は忙しいかもしれませんが、私たちの質問にひとつひとつ答えていただくことで、私たちも安心して治療に専念できます。そんな医師と患者の信頼関係のもとに行われる治療が理想なのですが、産婦人科ではどうなのでしょうか。』

この質問に対して、会長にお答えいただきたいと思います。
   
 たまたまお忙しい所にいらしたのでしょうが、この女性のおっしゃるのも最もだと思います。特に初めて受診する時は、誰でも不安なものです。どんな治療をするのか、どれくらいの頻度で通わないといけないのか、費用はいくらぐらいかかるのか、わからないことがたくさんあるでしょう。私たちもこの点について、常に気を配っています。ひとつひとつ、分かりやすく説明すれば、患者さんはずいぶん安心されます。そうして信頼していただければ、患者さんも症状や自分の生活環境について、詳しくお話になるようになります。そうなれば、私たちも患者さんのことをより理解できますし、よりベストな治療方法へとつながることになります。ですから、患者さんには、遠慮せずどんどん質問したり、希望があれば言ってもらいたいですね。どんなに細かいことでも、コミュニケーションは本当に大切です。これからも、患者と医師がコミュニケーションを通じて信頼しあえる環境づくりを心がけていきたいと思います。
   
1999年、日本でも低用量OCが発売されました。これは避妊、つまり女性の月経をコントロールできるということですから、「セルフコントロール」のひとつの形といっていいでしょう。会長のご意見をお聞かせください。
   
 人の身体のバランスを支えている三本柱には、自律神経系、内分泌系、免疫系があります。特に女性の健康のためには、ホルモンの分泌状態を、身体にあった形で調整するのは大切なことです。それができる薬が低用量OCなのです。例えば思春期には月経周期や月経量が安定せず、いろいろな異常が起こりやすいのですが、そうした場合の治療にもOCは有効です。また、更年期以降の腔分泌液不足も解消され、性生活もスムーズにできるようになりますし、骨粗鬆症や更年期障害のホルモン補充療法としても使われています。避妊を目的にする場合でも、医師の処方を受けることで、避妊や性感染症の正しい知識を得るきっかけになります。使う、使わないは個人の自由です。ただ、OCという選択肢を知ることで、女性は自分の身体をよく知り、自分で責任を持つという意識も高まってくると思います。
   
では最後に、女性の皆さんへのメッセージをお願いします。
 
 健康への意識を常に持つことで、クオリティ・オブ・ライフ、つまり生命や生活の質を真剣に考え、高めていただきたいと思います。一日一日を大切に考え、病気になった時も強い意思で立ち向かう。そんな女性の皆さんを応援するために、私たちは努力を惜しまず、これからも医師としてお役に立ちたいと思います。



《プロフィール》 坂元 正一(さかもと しょういち)
1950年東京大学医学部卒業。現在、(社)日本産婦人科医会会長、(財)日母おぎゃ一献金基金理事長、宮内庁御用掛、東京大学名誉教授、東京女子医科大学母子総合医療センター名誉所長のほか、世界産婦人科学会、世界不妊学会、世界周産期学会会長など多数の要職を経て、国際的にも多忙。主な著書に『更年期からのQOL』『家庭医学大事典(第2版)』『プリンシプル産科婦人科学1・2(改訂版)』『胎児』『胎児内分泌学』『ナースのための産科学』などがある。