性感染症は、性行為によって人から人へ感染する病気のことで、従来は梅毒、淋病(りんびょう)などが主なものでした。しかし、現在では新しい病気も増えてきています。その代表的な性感染症には、HIV感染症(エイズ)、性器ヘルペス、クラミジア感染症、尖形(せんけい)コンジローム、腟(ちつ)トリコモナス症、B型肝炎などがあります。性感染症の原因となる病原体には、ウイルス、細菌、原虫など多くの種類があり、これらの病原体が性行為により人から人へ感染しますが、感染しても症状が軽く、かかったことに気がつかず、パートナーにうつしてしまう病気もあります。この中には比較的簡単に治療できるものから、完全には治りにくいもの、エイズのように現在のところ根本的な治療方法が確立されていないものまであります。したがって、これらの性感染症に対しては予防することが大切です。性感染症の予防法は、Q-29を参照してください。

厚生省エイズ動向委員会の発表によりますと、性的接触を感染の原因とするHIV感染者の報告は依然として増加が続いています。特に、国内で感染する日本人男性の増加が顕著になっています。患者・感染者の年齢では、これまでに報告された中では20歳代と30歳代が52%(1996年12月現在)となっているように、若い世代での感染が多いことが特徴です(図−1)。また、厚生省結核・感染症サーベイランス事業の結果によりますと、その他の性感染症については、次のとおりです。
1. 淋病(りんびょう)様疾患は男女とも1992年から減少しましたが、1995年より再び増加する傾向がみられています。特に都市部での増加の兆(きざ)しが指摘されています。 クラミジア感染症は男性で1992年に軽度減少しましたが、それ以降は横ばいからやや増加傾向にあります。女性は1992年に増加が止まり1993年以降は横ばいとなっています。ただし、日本性感染症学会の報告の中には、クラミジア感染症をはじめとして性感染症の増加傾向を示す調査結果とともに、子宮頚管部(しきゅうけいかんぶ)からのクラミジア検出率が既婚女性で約5%、未婚女性で約13%という調査結果が示されています。我が国の性感染症の動向は決して予断を許さない状況です(図−2)
2. 性器ヘルペスは男性では横ばいですが、女性では増加の傾向にあります。
3. トリコモナス症、尖形(せんけい)コンジロームは男女とも減少傾向が続いています。
4. 梅毒については厚生省感染症サーベイランス事業の対象疾患とされていませんが、大阪府が行っている性感染症動態調査では、1995年は前年に比し早期顕性(けんせい)梅毒の増加が報告されています。なお、性感染症のそれぞれの症状などについては、以下の問いをご覧ください。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によるもので、このウイルスが体を病気から守る免疫力(体の抵抗力)を低下させてしまう病気です。感染後、多くは無症状ですが、2〜8週間後風邪に似た症状が現れる場合もあります。その後、長ければ十数年という無症状の期間があります。やがて体の免疫力がしだいに低下するにつれて発熱、下痢、体重減少などが起こり、さらに免疫力が低下すると重症な感染症(カリニ肺炎、結核(けっかく)など)や悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(カポジ肉腫(にくしゅ))などになりやすくなります。

梅毒トレポネーマパリダムの感染によって起こる病気です。感染後の期間と症状により、第1期から第4期に分けられ、特に初期(第1期、第2期) の梅毒に感染力があります。第1期は通常、感染後2〜4週間で外陰部(がいいんぶ)に痛みのない小豆(あずき)くらいのかたいしこりができ、やがて表面がただれるようになります。このしこりは1カ月くらいで消えますが、その前に、もものつけねのリンパ節がはれます。これは痛みもなく、うみが出ることもありません。これを放置すると症状は消えますが治ったのではなく、無症状のまま第2期へ進行します。第2期では、2〜3カ月すると熱やだるさを伴って、全身の皮膚に大小さまざまな形で赤褐色(せきかっしょく)の発疹(ほっしん)などが出たりします。また、外陰部(がいいんぶ)や肛門周囲などがじくじくしてしこりが多数できることもあります。さらに、 口の中の粘膜に乳白色(にゅうはくしょく)のまだら状の粘膜疹(ねんまくしん)が出ることもあります。これらの発疹(ほっしん)や粘膜疹(ねんまくしん)はやがて消失し無症状の状態に入ります。しかしながら、第1期および第2期の特有な症状が出ないまま病気が進行してしまう場合もありますので注意が必要です。このまま放置し第3期〜第4期に進むと内臓や脳をおかし重大な病気へと進行していきますので、感染の初期に適切な治療を受けることが大切です。

ヘルペスウイルスにより感染し、外陰部(がいいんぶ)に多数の水ぶくれができ、痛みや発熱などを伴います。水ぶくれはつぶれて潰瘍(かいよう)となり、排尿時に激しく痛みますが、感染しても症状が現れないこともあります。月経、疲労、妊娠したときに現れる場合もあります。妊娠中に性器ヘルペスにかかると、新生児が死亡率の高い全身性ヘルペスにかかる危険性があります。

淋菌(りんきん)の感染によって起こる病気です。性器の炎症が起こり、おりものが増えます。子宮頚管(しきゅうけいかん)以外にも腟(ちつ)や尿道にも感染が波及していることが多く、排尿痛や、うみの混じった尿が出るなどの症状が現れます。

クラミジアとよばれる一種の細菌により感染し、尿道、卵管に炎症を起こし、不妊の原因になったり、新生児に肺炎や結膜炎を起こしたりします。症状としては、おりものが増えたり、下腹部痛がありますが、症状がなく気づかずに経過する人が多いので注意が必要です。

ヒトパピローマウイルス(いぼのウイルス)により感染し、性器やその周辺にいぼが多数できる病気です。女性では、かゆみや焼けつくように感じる場合がありますが、男性では、いぼ以外の症状がないので放置されやすく注意が必要です。

トリコモナスとよばれる原虫により感染し、腟(ちつ)の炎症をおこす病気で、黄色のおりものが増え、外陰部(がいいんぶ)のかゆみや排尿時の痛みなどが起こります。トリコモナスは、腟以外の性器や膀胱(ぼうこう)、尿道、さらにはパートナーの性器や尿道などに侵入します。

B型肝炎ウイルスにより血液、体液を介して感染する病気です。症状としては、だるさ、食欲低下、発熱などが現れることがあります。感染後治癒する人と、ウイルスが肝臓に住み続け感染が持続する人(キャリア状態)がいます。キャリア状態から慢性肝炎とよばれる状態になり、肝硬変や肝癌になる人もあります。

性感染症は、性行為により血液、精液、腟(ちつ)の分泌液、粘膜が相互に接触することで感染します。したがって、不特定多数の人との関係を避け、特定のパートナーとの関係を守ることが重要です。
性感染症の予防方法は、コンドームを使用して粘膜、体液などの直接の接触をなくすことです。したがって、コンドームは性行為のつど初めから終わりまで必ず装着することなど、コンドームの注意書きにしたがって使用してください。

性感染症にはクラミジア、性器ヘルペスのように感染しても症状の現れにくいものもあります。このような場合は、気がつかないままにパートナーを感染させることがあります。エイズは、根本的治療方法が確立されていませんが、薬の使用や早期から日常の健康管理(規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠など)に気をつけることによって発病を遅らせることができるといわれています。したがって、性感染症の早期発見、早期治療は本人の健康(リプロダクティブヘルス)を守るためにもとても重要ですので、あなたとパートナーが積極的に性感染症の検査を受けるようにしてください。
また、性感染症の検査は、血液学的検査や子宮頚部(しきゅうけいぶ)の細胞学的検査を実施する際に同時に行うことが可能です。特別な心構えや時間を要するものではありませんので、OC服用の際に検査を受けるようにしてください。検査を受ける際は、気軽に医師に申し出てください。