OCには卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが含まれています。女性の卵巣からは女性ホルモンが分泌されており、このおかげで、女性は女性らしい体つきになり、月経(生理)が起こり、そして妊娠することができるのです。OCはこの女性ホルモンが配合された、“のむ”避妊薬なのです。
「OCってセックスの前に、または後にのめば避妊ができる薬」などと思っている方はいませんか?女性のカラダはそんなに単純ではないのです。
女性にはほぼ1ヶ月に1回、月経がおこります。そして正常なサイクルのとき1回排卵がおこっています。排卵のときに排出された卵子が精子と出会って子宮にくっつくと『妊娠』になることはご存知ですね。逆に言うと、排卵しなければ妊娠することもありません。
OCはこの排卵を抑えて妊娠を防ぐ薬なのです。


日本においてはようやく発売されたOCですが、世界的にはその歴史はたいへん古く、約40年前にさかのぼります。1950年代に、偽の妊娠状態をつくりだすという考えからOCの研究が開始され、1960年にアメリカでOC第1号が登場しました。それからOCは、その確実な避妊効果により、瞬く間に全世界に浸透していきました。しかし、問題点が全くなかったわけではありません。その当時のOCはホルモンの量が必要以上に多かったため、副作用が比較的多くみられ、ときには血栓症や高血圧といった副作用も報告されました。それらの報告を受けて、OCは様々な研究が重ねられてきたのです。その一つは含まれているホルモンの量を減らすこと(図1)、そしてもう一つは新しい成分を開発することです。





これまで40年近く、OCほど研究され、また改良されてきた薬剤はおそらく他にはないでしょう。低用量OCという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは永年の改良の結果、避妊効果を保ちながらホルモンの量を減らした薬なのです。現在、世界中で1億人近い女性がこの低用量OCを服用しているといわれ、最も普及している避妊法の一つです。もちろん日本に登場したOCも低用量OCで、従来のものに比べると安全性が著しく改善されたものなのです(図2)




もしかすると、『OCは副作用があって恐い』というイメージがあるかもしれませんが、低用量OCは永年にわたる安全性追求の末に生まれたものですから、過剰に心配する必要はありません。


OCは、卵巣から女性ホルモンが分泌されるしくみと密接な関係があります。実は、卵巣というところは勝手に女性ホルモンを出しているわけではありません。脳のなかにある視床下部や下垂体というところからの指令によってホルモンを出しているのです。ここからの働きかけによってはじめて卵巣は働き出します。卵子が育ち、そして女性ホルモンを分泌するのです。分泌された女性ホルモンは、血液中に入り、脳の視床下部や下垂体へ到着します。すると脳は、「もう十分女性ホルモンが出ているな」と、指令を出すのを止めるのです。このように、脳と卵巣はお互いに調節しあっているのです(図3)




こういうしくみがあるところにOCをのむと、つまり外から女性ホルモンがカラダの中に入ると、女性ホルモンは血液にのって視床下部や下垂体へ到着します。これにより、脳は卵巣が十分働いて女性ホルモンを出していると錯覚してしまいますので、卵巣に対して指令を出すことはありません。卵巣は下垂体からの指令がなくては働くことができませんので、卵子が育つことはなく、ホルモンも出ず、妊娠するための排卵もおこらないのです(図4)。





ですから、OCをのんでいる時は、のんでいない時に卵巣から出されるホルモンはほとんど出ていませんので「OCをのむとカラダがホルモン漬けになる」というのは全くのウソなのです。
別の見方をしてみましょう。女性は妊娠しているときには重ねて妊娠することはありません。おなかの中に8ヵ月の赤ちゃんと5ヵ月の赤ちゃんがいるなんてことはありえないですね。つまり、妊娠しているときと同じような状態をつくりだせば、妊娠しないということなのです。妊娠中は、妊娠を維持し胎児を育てるために、妊娠して初めてできる胎盤というところから卵胞ホルモンと黄体ホルモンがたくさん分泌されています。OCをのむということは、胎盤から出ているホルモンのかわりに外から少量のホルモンを摂取して、妊娠中と似たホルモン環境にするということなのです。実は、この偽の妊娠状態をつくりだすという考えが、OCが誕生するきっかけだったのです。
また、OCをのむと子宮内膜が妊娠に適さない状態になったり、子宮頚管という精子の通り道の粘液をネバネバにして、精子を子宮内に入りにくくしたりする作用もあり、避妊効果を高めています。(図4)


OCの最大のメリットは確実な避妊効果です。きちんと正しくのんでいれば、1年間に妊娠する確立は0.1%、つまり1,000人の女性が1年間OCをのんでいるにも関わらず妊娠するのは1人、ともいわれます。日本で最も普及しているコンドームでは正しく使用した場合でも3%であり、OCの避妊効果が極めて優れていることがお分かりになると思います→Q5。しかし、OCで確実な避妊効果を保つためには、決められた通り正しくのまなければなりません。また、次のような場合は正しくのんでいても避妊効果が弱まることがあるので、先生に相談してください。

● OCをのんでいる期間中に、吐いたり激しい下痢が続く場合
● OCの処方を受けるときに、他の薬をのんでいる場合
● OCをのんでいる期間中に、他の薬をのまなければならなくなった場合


OCはのみ方が難しいという印象があるかもしれませんが、簡単に言うと、毎日1錠ずつ忘れずにのめばいいのです。ではいつのみ始めればいいのでしょう これはOCのタイプによって2種類ののみ方があります。一つは月経が始まった日からのみ始めるタイプ、もう一つは月経後の最初の日曜日からのみ始めるタイプです(図5)





ただし、日曜日からのみ始めるタイプは、月経が週末におこらないというメリットがありますが、初めてのむ周期の最初の1週間は他の避妊法を併用する必要があります。
OCのタイプによって違うことはもう1つあります。それは21錠が1シートになったものと28錠が1シートになったものがあるということです→Q3  (図6)





21錠タイプのものは1日1錠を21日間のみ、その後の7日間は薬をのみませんこの薬をのんでいない7日間のうちに月経に似た出血がおこります。そして、その出血が終わっていても続いていても8日目からまた新しいシートの錠剤をのみ始めます。薬をのむ21日間とのまない7日間、この28日間を1周期として服用を繰り返すわけです。一方28錠タイプのものは、21錠タイプで薬をのまない7日間にも薬をのみます。しかしこの7日分は、有効成分の全く入っていない偽の薬なのです。つまり、毎日のむことを習慣付けるためにわざと28錠としているのです。この場合は、最後の7錠をのんでいる途中に出血が起こります。21錠タイプのものも28錠タイプのものも、どちらも28日間を1周期として服用することに変わりはなく、当然避妊効果もまったく同じです(図7)
大切なのはのみ忘れをしないことです。のみ忘れると避妊効果が下がります。OCには風邪薬などのように1日3回食後、などという決まりはありません。朝おきた時でも、朝食後でも夕食後でも寝る前でもいつでもかまいません。できるだけ1日1錠を毎日ほぼ同じ時刻にのむよう心掛けてください。
ここまでで、OCののみ方はやっぱり難しいと思う方もいるかもしれません。ただこれは日本で発売されたOCにいろいろな種類があり、そのすべてののみ方についてご紹介したからです。もしあなたがOCをのむことになったら、そのOCののみ方だけを覚えてください。始めの周期は戸惑うこともあるかもしれませんが、その後は28日を1周期として、同じことを繰り返すだけでいいのです。


現在発売されている低用量OCは、昔日本でOCとして流用されていたホルモン量の多い薬に比べると安全性はかなり改善されています。しかし、副作用が全くなくなったわけではありません。症状の程度には個人差がありますが、3人に1人ぐらいの割合で副作用を経験されるかもしれません。一番多い症状は、気持ちが悪くなる、吐き気がする、などでしょう。OCをのんでいるときは妊娠しているときと似たようなホルモンの状態になっているので、妊娠中のつわりのとっても軽いものと同じような症状が起こってくるわけです。この症状はホルモンバランスが変わることによっておこるため、妊娠初期によくみられますが、カラダが慣れてくるとだんだんとおさまってきます。OCをのんでいるときも同様で、のみ始めの1〜2周期ぐらいまでは表1のような副作用が出ることもありますが、のみ続けているうちに次第に軽くなったり、なくなったりしていきます。ただし、OCをのむと偽の妊娠状態になる、といっても、おなかが大きくなってくるなんていう副作用はありませんのでご安心ください。

表.1  OCをのむことによっておこる可能性がある副作用
卵胞ホルモンによるもの
黄体ホルモンによるもの
男性ホルモンによるもの
・きもち悪い、吐き気がする
・頭痛がする
・下痢ぎみになる
・カラダがむくむ
・おりものがふえる
・経血(月経)量がふえる
・血圧が上がる・・・など

・なんとなくだるくなる
・気分が沈む
・乳房が張る
・月経前に起こる不快感がある
・性欲が低下する
・経血(月経)量が減る・・・など

・体重がふえる
・にきびができる
・性欲が高まる
・食欲がふえる・・・など

これ以外にも、不正出血といって服用後の出血の時期でないときに少量の出血をみることがあります。この症状ものみ始めたころに多く、のみ続けるうちに少なくなってきます。またのみ忘れると出血することがありますので気を付けてください。いろいろな種類のOCの中でも3相性OCは、1周期中のホルモンの量を女性の生理的なホルモンパターンに合わせ3段階に変化させており、比較的不正出血をおこしにくいという報告があります。
極めてまれですが、血栓症という重大な副作用がおこる可能性があります。また癌についての心配もあることと思います。OCに限らず、『ホルモンをのむと癌になる』ということを聞いたことがある方は多いのではないかと思いますが、OCに関してはさまざまな研究の結果、何十万人もの女性のデータをまとめた信頼できるデータがあります。OCをのむ人は、のまない人に比べてかかりやすくなる癌もあれば、かかりにくくなる癌もあることがわかってきたのです。乳癌と子宮頚癌に関しては、定期的なチェックを受けてください。このように、OCをのむにはある程度の検査は必要です。でものまなければ検査はしなくていいのかというと、そういうものではありません。女性である限り、女性特有の器官の病気は避けられません。これをきっかけに、きちんと健康診断を受ける習慣を身につけることをお勧めします。
OCの安全性として知っていただきたいのは、確かにOCは副作用も発現しますが、妊娠することに比べると女性のカラダにかかる負担は明らかに少ないのです。言い換えれば、OCをのむことよりも、避妊に失敗して望まない妊娠をすることの方が、女性の心とカラダへの影響は大きいということなのです。


OCには確実な避妊効果以外にカラダにいい効果が数多くあることがわかっています。 OCを服用すると、月経に伴う不快感が少なくなると思います。月経時の腹痛、腰痛、頭痛などはOCをのむことによってかなりの場合、軽くなります。同時に月経の日数も短くなる傾向があり、月経による貧血もおこりにくくなります。さらに、月経が約28日の周期で規則正しく繰り返されるので、周期が短かったり長かったりといういわゆる月経不順が解消されます。月経に伴う症状の他には、不妊の原因になることもある骨盤内感染症という病気にかかりにくくなります。さらには卵巣癌や子宮内膜癌になる確率がOCをのまない人の約半分になることも報告されています。これらの癌は50代から多く発生しますが、OCの効果はのむのを止めてからも15年以上続くといわれています。その他にもOCによってかかりにくくなる病気がいくつかあることがわかっています。

a.月経困難症
月経時に起こる下腹部痛、腰痛、お腹が張る、吐き気、頭痛、疲労感、脱力感など、その症状が強く、日常生活に支障がでるような場合を「月経困難症」といいます。
OCの服用により、月経時の痛みが軽減されたと報告されてます。

b.過多月経
月経の量が非常に多くナプキンが1時間持たない、外出もままならないような日が続く場合、レバーのような血のかたまりが頻繁に出るなどの症状がある場合を「過多月経」といいます。OCの服用により月経血量は減少します。

c.卵巣がん
卵巣がんは卵巣にできる腫瘍です。現代女性の妊娠・出産回数が少ないことと関係があると考えられています。OCの使用期間が長期化するのに伴って卵巣がんの死亡率は低下しており、リスクの低下はOC中止後15年まで持続するとの報告があります。

d.機能性卵巣のう胞
機能性卵巣のう胞とは、排卵のある月経周期に伴って時に起こる現象で、卵巣の中に液または粘液状の物質で満たされたのう胞(袋)ができ、卵巣のう腫のように卵巣が大きく腫れるものですが、OCを服用している女性では発生率が低いことが明らかにされています。

e.子宮体がん
子宮体部の内膜にできるがんです。未婚の人や妊娠・出産の経験の少ない女性に多いことから、女性ホルモンのうちの卵胞ホルモン(エストロゲン)が関わっているのではないかと考えられています。 OC服用により、子宮体がんによる死亡率は低下し、この効果は使用中止後10年後まで持続しているとの報告があります。

f.大腸がん
大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収しながら大便にするところです。大腸粘膜のあるところではどこからでもがんができますが、OC服用により、予防効果があるかどうかははっきりしていませんが、大腸がんの発生が抑えられることが確認されています。

g.骨粗鬆症
骨から主成分のカルシウムが溶け出してしまうために、骨の大きさは変わらないのに、骨の中が軽石やスポンジのようにスカスカになって、大変にもろくなります。OCは加齢による骨密度の減少に対して予防効果を示しています。

h.にきび
OC服用によって軽減することが報告されています。

i.その他
OC服用により、関節リウマチの発生率が低下したと報告されています。


さて、ここまでの説明でOCをのんでみようかなあと思われた方もいるかもしれませんが、OCは誰もが服用できるわけではありません。また、OCをのむ前には、産婦人科で必要な検査を受け、またのんでいるときも副作用を防止するために、血液検査や尿検査、婦人科検診などを定期的に受けるように心掛けて下さい。これは、もちろんOCで副作用がおこってないかを確かめる意味もありますが、それよりもあなた自身の健康のためにもお勧めします。女性は子宮や卵巣など、女性にしかない器官をもっています。これらは胎児を育てることのできる、非常に神秘的なものです。当然とてもデリケートにできており、異常があっても自覚症状がないことも多いのです。こまめに自分で管理してあげなければいけませんが、わかっていてもできないのが婦人科検診。そういう意味では、OCをのむことは確実な避妊効果と共に定期検診の機会も与えられることになり、自分のカラダは自分で守ろうと思う女性にとっては一石二鳥ともいえます。 もう一つ、OCは性感染症を防止するものではありませんので、エイズや梅毒、クラミジアなどの性感染症防止のためには、ぜひコンドームを使って下さい。つまり、避妊ということと、性感染症を防ぐということは全く別のことなのです。


OCは、セックスとは関係なくのめますので、セックスのムードを壊すこともありませんし、性感を損ねることもありません。むしろ、信頼できる避妊効果がありますので、より充実した性生活を送ることができるのではないでしょうか。さらに、女性の意志で避妊が実行できるというのもOCの特徴です。もちろん避妊というものは女性だけが背負うものではなく、そのカップルが協力して実行すべきものですが、男性の協力がなかなか得られない状況もあることを考えると、女性が自ら避妊できるということはメリットとして挙げることができるでしょう。
そしてもう一つ、それは妊娠したくなればいつでも妊娠できるということです。OCと同様に高い避妊効果が期待できるものとして不妊手術というものがあります。これは卵子と精子の通り道である卵管を塞いでしまう方法で、避妊効果は確実ですが、再び妊娠することはほぼ不可能になってしまいます。それに対して、OCはのむことを止めれば、もとの妊娠できる状態に戻るのです。


以上、OCについて説明をしてきました。だいたいのことはこれでおわかりいただけたと思います。でも実際使ってみて、不安なこと、薬の効果や副作用など、気になることがあればなんでも先生に相談しましょう。一人で悩んでいても何の解決にもなりませんよね。先生の説明を聞いて、きちんと納得してもらいたいものです。
また、私たちは決してOCをのみなさいと勧めているわけではありません。選択するのはあなた自身なのですから。確かなことは、あなたにとって避妊の選択肢が1つ増えたということなのです。これを機に、OCに限らず避妊ということについて理解を深め、カップルとして真剣に取り組んでほしいと思います。